診療内容
意外に多い神経痛
私自身が開業してまず思ったことは、頭痛を主訴に訴える患者さんで意外に多いのは神経痛ではないかということです。神経痛とは脳幹部や脊髄からでてきた末梢神経がいろいろな原因で刺激されることに起因される痛みのことです。その中で最も多いのは身体的・精神的ストレスによる刺激ではないかと思っております。特に痛みやすい神経としては三叉神経と後頭神経が代表的ではないかと思います。
三叉神経は顔面および口腔内の知覚を司っており後頭神経は後頭部から頭のてっぺんを経由して額までを司っております。強い針で刺したような、あるいは焼け付くような痛みが特徴です。後頭神経痛では首の付け根から耳の後ろを通るようにし側頭部へピリピリッとした痛みを呈します。原因としては末梢神経への圧迫や炎症などが直接のものとしては考えられますがほとんどの患者さんはそのような原因は見つかりません。つまり前述した身体的・精神的ストレスが起因することが多いのです。ストレスによりセロトニンやノルアドレナリンなどの疼痛抑制の神経伝達物質が減りますそのため神経が過敏性を獲得します。そして痛みのストレスがありさらに疼痛抑制物質が枯渇するという結果になります。まさに痛みの悪循環が始まるのです。
身体的ストレスは姿勢の異常や長時間同じ姿勢でいた後や固いものを枕にして休んだ後などの生理的なものから打撲のような外傷、風邪や中耳炎あるいは貧血や甲状腺などのホルモン異常で出現するものから悪性腫瘍やパーキンソン病などの神経変性疾患で出現するのもがあります。比較的まれだとされているものに椎骨動脈解離や小脳梗塞・小脳腫瘍や頚部腫瘍などがあります。椎骨動脈解離は首の椎骨という骨の中を走る動脈の癖が避ける病気です。動脈癖は内膜と中膜と外膜の三層に分かれており、内膜と中膜あるいは中膜と外膜の間が避けて血液が入りこむ状態が椎骨動脈解離と言います。この疾患の診断は画像診断に頼ります。頭部MRIにて血管を撮影するのです。この時理想的なMRI装置は高磁場(1.5テスラ以上)の装置です。当院にも頭部CTや低磁場MRIにて異常ないと言われた患者さんが当院MRIにて異常が指摘でき総合病院に紹介する例が年に数例あります。この疾患は稀な疾患というより診断されるのが稀だといっても過言でないかもしれません。椎骨動脈解離は血管の中に裂けると(内膜と中膜の間)脳梗塞をきたし血管の外に裂けると致死率40%と言われるくも膜下出血になります。これらの病気を発症してからは診断は簡単ですが予後が悪くなります。後頭神経痛は9割以上は危険でない頭痛ですがそれは症状のみでは鑑別できません。後頭神経痛が出現したら高磁場MRIのある施設に受診されることをおすすめします。
※後頭神経痛は大後頭神経痛と小後頭神経痛と大耳介神経痛の三種類がありますが、お互い合併することがあったり、顔面痛である三叉神経の領域の痛みと合併することがあります。それは脊髄脳幹部にそれらく神経核(神経の本拠地)が接近して存在するからです。
神経痛を治す方法
繰り返し起こる長年の神経痛は一次性(器質的原因がない)の可能性が高いと思いますが、一次性の神経痛の場合は肩こりや首こり、睡眠不足やストレスからくることが多いと言われております。後頚部や肩のマッサージや入浴で首までしっかり温めることが有効です。逆にこれらのことをして増悪したり改善しない頭痛は二次性頭痛の可能性があります。