診療内容
物忘れと認知症
当院は昭和45年より広島市中区舟入(ふないり)で開業しております。したがって当院に46年間も通院されている患者さんがいらっしゃいます。中には100歳を超えてお元気な方もいらっしゃいますが年とともに我々は老いるものです。そのなかで「物忘れ」を訴える患者さんは数多くいらっしゃいます。しかし、意外と思われるかもしれませんが認知症の60%を占めるアルツハイマー病の患者さんの最初の訴えとして物忘れは少なく、頭痛やふらつきやめまいなどの訴えで受診されることが多いのです。なぜなら、初期アルツハイマー病の患者さんは物忘れを自覚しないのが特徴だからです。したがってアルツハイマー病の患者さんが物忘れで受診されるときは必ずといっていいほどご家族がつきそいで受診されます。ご家族が患者さんの物忘れに気づいてご心配されて受診されます。「人の顔と名前が一致しない」とか「車の名前がでてこない」とか「あれ、それ」とかいったように言葉の名前がでてこないのです。これは意味記憶(いみきおく)といってアルツハイマー病でもっとも先に障害されることが多いもの加齢においてもおこります。トランプのゲームで神経衰弱というのがありますよね。お子さん(お孫さん?)と勝負したらやたらと子供の方が覚えてたということないですか。自然の加齢によって脳機能は衰えるものです。意味記憶のように単純な丸暗記的な記憶って年とともに衰えるのです。また、「昨日は○○に行って××を食べて、その帰りに△△をした。」といった記憶ってエピソード記憶といって加齢で最初に障害されるといわれる記憶ですが、アルツハイマー病の初期でも衰えていきます。つまり物忘れは一般の方には病的なものかはわかりにくいもの。ですので、ご家族などやご自身の物忘れにお気づきのときは早期の認知症を専門にみてる病院への受診をお勧めします。
認知症について
認知症は脳などに何らかの原因があり起こる状態です。アルツハイマー病以外にもいろいろな病気が原因で起こります。一方、老化による物忘れは、年と共に起こる症状です。認知症と老化による物忘れは異なります。認知症は、脳の神経細胞が壊れたり機能異常を来たしたりするために起こります。認知症が進行すると、だんだんと理解する能力や判断力が落ちてきます。それにより、社会生活や日常生活に支障がでてくるようになります。 認知症の多くは、アルツハイマー病とレビー小体型認知症と脳血管性認知症の三つです。
- アルツハイマー病 50%
- レビー小体型認知症 20%
- 脳血管性認知症 15%
- その他 15%
その他の中には治る認知症もあります。
正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)
脳脊髄液(のうせきずいえき)が脳室に過剰に溜まり、脳を圧迫することで脳の機能が障害されます。認知症・歩行障害・排尿障害が正常圧水頭症の三大症状です。
慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)
頭をぶつけたりしたときに頭蓋骨と脳の間に血の固まりができ、それが脳を圧迫して脳機能障害を呈します。認知症の他、頭痛や歩行障害などを呈する場合があります。
脳腫瘍(のうしゅよう)
腫瘍組織が直接、記憶中枢に浸潤したり、圧迫したりして認知症を呈します。
甲状腺機能低下症
人間が生きる上でのエネルギー産生部位である甲状腺からの甲状腺ホルモンの分泌が低下して認知症を呈します。甲状腺機能低下症単独で認知症を来すには、その他の合併症(全身倦怠感、徐脈、浮腫など)を認めることが多い。
橋本脳症
甲状腺機能低下症などで出てくる甲状腺に対する自己抗体が上昇します。同時に大脳に対する自己抗体もできてきます。認知症の他、意識障害を呈することも多々あります。
薬剤性
睡眠薬や向精神病薬、パーキンソン病や不随意運動によくしようする抗コリン薬などの副作用で認知症になることがあります。通常は原因薬剤を中止することで症状は回復されます。
栄養障害
- ビタミンB1欠乏症
- ビタミンB12欠乏症
- 葉酸欠乏症
などが代表的な栄養障害による認知症です。
アルコールによる認知症
アルコールを止めれば軽快するタイプのものから、飲酒をやめても脳萎縮が進行するといわれるタイプのものまであります。
梅毒感染
近年増加の一方である梅毒感染症による認知症です。感染直後に出現する場合は髄膜炎(ずいまくえん)のことが多く、通常は、感染より数十年もたってから認知症が出現します。大量のペニシリン投与など抗生剤により治療することが可能です。