診療内容
アレルギー科について
アレルギー疾患とは、免疫機能の異常によって様々な症状が引き起こされる疾患です。
本来免疫機能とは、ウイルスや細菌といった人体に悪影響を与えるものに対して作用し、排除することで人体を守る防衛機能ですが、特に悪影響を与えないもの(ほこり・花粉・食物・薬物などの中の物質:アレルゲン)に対しても過剰に反応することで、体内で様々な化学伝達物質が過剰に放出され続けることにより発症する症状のことです。
疫学調査によれば、全国民の約3分の1が何らかのアレルギー症状を訴えているといわれています。
当クリニックでは、花粉症・アレルギー性鼻炎・じんま疹・気管支喘息などのアレルギー症状の改善へ向けて「対症療法(症状そのものに対しての治療)」と「根治療法(症状の原因となったものに対しての治療)」の2つの治療法を複合的に用いることで、より再発の可能性の低い効果的なアプローチをしていきます。
例えば、炎症の抑制に効果的なステロイド系薬品などを用いた「対症療法」で炎症部分の症状を和らげ、この炎症の原因となっている免疫機能異常を起こしている部分の改善・正常化には、漢方を用いた「根治療法」を用いるなど、様々なアレルギー症状の治療・改善へ向けて取り組んでいます。
また、アレルギー疾患は、寝不足・過労・ストレスなどや有害な食物(農薬・合成保存料や着色料などを含有するもの)、合成洗剤で洗濯した衣類なども症状悪化の原因となります。
当クリニックでは、そのような日頃の生活環境を改善することも重要な治療法と捉えており、医学的治療と同時に様々なライフスタイルアドバイスもさせていただきます。
アレルギー疾患について気になる方は、症状が悪化する前にぜひお気軽にご相談ください。
成人喘息について
アレルギー反応のメカニズム
- (1)アレルゲンの体内侵入
- アレルギーの原因となる物質であるアレルゲンは、ダニ、ホコリ(ハウスダスト)、花粉、食物などさまざまなものがあります。特に喘息の場合、ダニやハウスダストが主なアレルゲンとして挙げられます。
- (2)アレルゲンの異物としての認識
- 体内に侵入したアレルゲンは、免疫システムの一部である樹状細胞によって異物として認識されます。 その後、樹状細胞は情報をヘルパーT細胞に伝達します。
- (3)IgE抗体の放出
- ヘルパーT細胞は、情報を受け取るとB細胞を刺激し、IgE抗体(たんぱく質の一種)を大量に生成し放出します。
- (4)アレルギー反応の準備が整う
- 放出されたIgE抗体は、マスト細胞の表面に結合し、アレルゲンが再び侵入した際に反応する準備を整えます。この段階を感作と呼びます。アレルゲンごとに特異的なIgE抗体が生成され、この段階では症状はまだ現れません。
- (5)アレルゲンの再侵入と炎症反応
- アレルゲンが再び体内に侵入すると、マスト細胞上のIgE抗体と結合し、マスト細胞を活性化させます。その結果、マスト細胞から炎症性物質(ヒスタミンやロイコトリエンなど)が放出され、気道に炎症が引き起こされます。炎症性物質は、好酸球からも放出されます。
- (6)気道に炎症が起こる
- 上記のプロセスにより、気道に炎症が引き起こされます。
※注:樹状細胞、ヘルパーT細胞、B細胞、マスト細胞、好酸球はすべて白血球の一種であり、免疫システムの一部として体内の異物を排除する役割を果たします。アレルギーは、この免疫システムの過剰な反応によって引き起こされます。
喘息の発症要因
喘息は、個体的な要因と環境的な要因が絡み合って発症します。
- 個体的要因
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- [遺伝子素因]両親に喘息があると、子供の発症リスクは3~5倍程度高くなります。
- [アトピー素因]環境中のアレルゲンに対する過敏反応が強い場合、喘息の有病率が増加します。
- [気道過敏性]気道が刺激に過敏に反応すること
- [性差]小児では女児よりも男児に喘息が多くみられます。成人では女性の有病率が高くなります。出生時体重や肥満BMIが高いほど喘息発症のリスクが高いとされています。
- 環境因子
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- 喫煙
- アレルゲン
- 呼吸器感染症
- 大気汚染
- 食物
- 鼻炎
成人喘息の特徴
成人喘息は、呼吸をするとゼーゼー、ヒューヒューという音がするぜん鳴があることや、咳が続くこと、呼吸困難が起こることなどの症状が特徴です。冷たい空気や煙、ハウスダスト、運動などが症状を誘発することがあります。台風や気候の変わり目に症状が出やすい傾向もあります。
また、非アトピー型が多く、小児喘息では9割以上にアレルギーの関与が認められますが、成人喘息では、アレルゲンを発見できるのは6割程度です。残りの4割はアレルゲンを発見できない「非アトピー型喘息」です。アトピー型の主な環境アレルゲンとしては、花粉、ダニ・ハウスダスト、昆虫(ガ、ゴキブリなど)、ペット(とくにネコ)、カビなどがあります。
成人になってから初めて発症するケースが多く、小児喘息の持ち越しや、小児喘息がいったん治癒または寛解(長期間、無症状で無治療の状態)した後、大人になって再び発症することもあります。中高齢での喘息の70~80%以上が、成人後に発症しています。
リモデリング
喘息治療の中断や放置などで炎症が長期に続くことで気道の線維化が進んで硬くなり、気道がせまい状態のまま、もとに戻らなくなることがあります。治療しても治りにくくなったり、重症化を招いたりする要因です。炎症が続くことにより、気道壁や基底膜が肥厚、平滑筋が肥大し、気道がせまい状態のまま戻らなくなります。
成人喘息の診断
診断には、胸部レントゲン検査、呼吸機能検査、血液検査でのアレルギーの有無の検査などが行われます。また、喘息と区別が必要な疾患として、咳喘息、COPD、心臓疾患、アトピー性咳嗽、百日咳などが挙げられます。
成人喘息の治療
成人喘息の治療には、重症度に応じた治療薬の使用が行われます。治療がはじまったら、症状のようすを評価してコントロール状態をみながら治療薬を調整します。重症度別の標準の治療薬は、喘息治療管理ガイドラインで指針があります。治療薬には吸入薬や経口薬があり、喘息の発作を鎮めたり、炎症を抑えたりする目的で使用されます。重症度や症状の頻度に応じて、治療薬の種類や使用方法が決定されます。また、治療の効果を定期的に評価し、必要に応じて治療計画を調整することが重要です。喘息の治療には薬物療法だけでなく、生活習慣の見直しやアレルギー対策なども重要です。医師の指示に従い、適切な治療を行うことが大切です。