執筆著書・論文
ヒステリー球
今回広島テレビの取材に選ばれてヒステリー球についてインタビューされることになりました。
ヒステリー球のヒステリーはヒスともいい単に短気であることや、興奮・激情により感情が易変し、コントロールが出来なくなる様子のことを意味することが多いのですが医学的に使用する場合は器質的疾患(食道がんや喉頭がんなど)がないのにも関わらず精神症状や身体症状が出現するような状態をさします。
ヒステリー球とは器質的障害がないにも関わらず喉の奥に何かが当たっているような感覚のことです。その何かが例えば球(たま)のような感覚であるのでヒステリー球と呼ばれます。食べ物を食べたり飲み物を飲んだりする時にはその感じは通常軽減します。この症状は常に気になってしまったり悪くなったりするのでとても不快になります。海外での調査ではなんと全人口の45%くらいの人がヒステリー球をなんらかの形で人生に一度は経験すると言われております。通常は一時的な症状ですが、病院にこの症状で受診される方は通常は30歳から60歳の女性といわわれております。
ヒステリー球はストレスや不安や抑うつ状態から誘発されるようです。ストレスによる緊張が食道平滑筋の異常なスパスムを生み出すといわれ、喉の奥に球があるような感覚になります。また人は恐怖感や悲壮感を身体的に様々な方法で表現します。例えば親戚が喉頭がんになったりすると喉の奥にいままで異常に注意を払ってヒステリー球を感じてしまいます。心的外傷経験などでも同様にそのストレスがヒステリー球を感じるようになります。
咽喉頭異常感症は通常は数時間や数日で軽快することが多く心配ありません。もし一週間以上持続するようであったり食事をしたりすると増悪するようでしたらかかりつけの医師に受診されてみることが大切です。そして内服薬(漢方薬や抗不安薬など)で症状が消失しないのであれば耳鼻科や内視鏡科などで検査されることが大切です。通常は内服で軽快されますが、基礎にあるストレス、不安感、抑うつ状態を除くためには精神科にてトークセラピーや認知行動療法などが有効であることがあります。当院ではまずは半夏厚朴湯や茯苓飲合半夏厚朴湯を用いたり抗不安薬を処方しますが、軽快しない場合は耳鼻科や内視鏡科にコンサルトします。また基礎疾患のストレス、不安感、抑うつ状態については 専門の精神科にコンサルトします。
以下咽喉頭異常感症を呈した場合の器質的疾患です。
局所的病変
咽喉頭の腫瘍、副鼻腔炎(後鼻漏)、舌根扁桃肥大、喉頭蓋の形態異常、過長茎状突起、茎突舌骨靭帯の化骨、頚椎異常、口蓋垂の過長、唾液分泌異常、食道癌、胃癌、胃下垂、食道潰瘍、食道炎、食道静脈瘤、食道憩室、アカラシア、マロリー・ワイス症候群
全身的病変
甲状腺疾患、性ホルモン異常、悪性貧血、Plummer-Vinson 症候群、糖尿病、強皮症